映画備忘録

見たもののメモ帳がわりのようなもの

James Gray / エヴァの告白 (2013) ★★

原題は『THE IMMIGRANT』

ジェームズ・グレイのNYが好きなのでガツンとNY&USAなテーマにすごく期待してしまったのが悪かったのですね…

正直ジェームズ・グレイ比でそこまででもない

 

『トゥー・ラバーズ』のころからなんとなく思うけど

俺の好きな『リトル・オデッサ』とか『アンダーカヴァー』とかから離れたがってんのかなぁ?

 

でもラストショットで面目躍如

窓の外を見るホアキン・フェニックスにズームしていくカメラ

ホアキンは窓から離れるけれどカメラはズームし続ける

スコープの画面左半分には窓、右半分には鏡の構図が作られる

窓の向こうには海が見えマリオン・コティヤールの乗る船が沖へと進んでいくのが見える

鏡には部屋のドアが映り、ホアキン・フェニックスが外へ出ていくのが見える

 

こういうの見せられるとジェームズ・グレイに着いてきてよかったって思うよね(´・ω・`)

 

Manoel de Oliveira / アンジェリカの微笑み (2010) ★★★

オリヴェイラの最後の長編

 

いまだにレオノール・シルヴェイラショックが続いてるのに、今回は本当に孫がいるおばあちゃん役…

『ブロンド少女』といい『アンジェリカ』といい

美少女ポジションはレオノール・シルヴェイラだったころが懐かしい…

 

アンドレ・バザンの「写真映像の存在論」と溝口健二の『雨月物語』を思い出した

あるいはジョルジュ・メリエス

 

豪雨の夜に写真屋のドアを叩いたら奥さんが窓から顔出すファーストショットにこれがコメディと気づく

奥さん雨降ってるから傘さしてるわ、下で話がついたら車でいなくなるまで無視されてるわ…

ところかまわずアンジェリカの名前を叫びまくる主人公も

下宿先の妄想ババアも

1日に何度も声かけまくる乞食ジジイも

いいキャラしてる

 

人物のセリフとか動きとか済んで誰もいなくなったあとも、にゃんこがずっと鳥さん見ているショットがよかったです。(´・ω・`)

Bertrand Bonello / サンローラン (2014) ★★★★

何にも期待してなかったらなかなかどうしてすごい

 

イブ・サンローランの60年代~70年代のぐだぐだとした生活が描かれる

ちょっと出てくる晩年役がヘルムート・バーガーなところからも漂うヴィスコンティ感が全体のムードをつくってる

画面が派手ながら落ち着いたアダルト感じで劇中で若手のゴルチエを批判してるんだけど、ファッションわからんが要するに初期アルモドバル的なキッチュな系統でしょ?

そりゃ批判するわなって派手さの質

 

ギャスパー・ウリエルがルイ・ガレルと初めて会うとこがいい

クラブの端と端にいてカメラがゆっくり行ったり来たり

2人の間には躍ってるひとがいっぱい

 

あとルイ・ガレルが新しい家でベッドに誘うとこ

なんかスローになったりこっち向いたりなんだかわからんが大変な感じ

 

この人微妙なスローモーションがうまいのね

 

ヘルムート・バーガーが真っ暗な部屋のテレビで地獄に堕ちた勇者ども』見てるのは

てるてる家族』でいしだあゆみ上原多香子の紅白出場見てるの以来の衝撃でした(´・ω・`)

Manoel de Oliveira / ブロンド少女は過激に美しく (2009) ★★★

101歳のときの作品

電車でお孫さんが隣の席のおばちゃんに過去話をする

会話の内容が映画のほとんどを占めて

最後は電車が遠くへ走って消えていくショット(電車が小さくなってく途中でアップに切り替わる)で終わる

 

相変わらずきっちりとフィックスで画をつくって

パンパンと画面が変わってくのが楽しい

向かい合う窓の切り返しとかね

昼間の街の遠景→同じ位置からの夜の街

のショットの切り替えで時間変化が示されるのが多用されるのが素敵

最初の電車の音が過去話にもしばらく継続して流れてるのも素敵

 

でも一番の見どころは窓の切り返しの果てにあるお孫さんの小躍り…

 

そして電車のおばちゃん…

最初のシーンで隣りの席を向かずにカメラ目線で話すから目が合って

なんかこのおばちゃんってかおばあちゃんになりかけみたいな人見たことある気がする

と思ってるとふと気づく

 

…レオノール・シルヴェイラ(´;ω;`)

 

昔デプレシャンの『クリスマス・ストーリー』で階段降りてくメルヴィル・プポー見たとき以来の衝撃でした(´・ω・`)

岩井俊二 / リップヴァンウィンクルの花嫁 (2016) ★

昔『地獄の警備員』かなんかで絵画の買付に関して

「一流作家の小作と二流作家の代表作なら二流の代表作を選べ、なぜなら作家の評価は時代で変化するがどれが代表作かは変化しないからだ」

みたいなことを言ってたのを思い出した

 

つーことでよーこれさ岩井俊二の代表作だと思うわけさ(Cocco風に)

 

岩井俊二的モチーフのオンパレード 

しかもキャリアを考えれば集大成感があっていいのにむしろ若手感のあるみずみずしさ

 

でもやっぱこの人は写真的な映像に秀でた人で活劇に興味はないんだよね …

黒木華Coccoがウエディングドレスでドライブして洋館でパーティーしてもBGMのPVのようだし

トランク持って家出てったときのスローモーションはない…今は亡きウェス・アンダーソンが恋しくなった

夫の浮気相手の彼氏(自称)が来たときにワンショットで部屋の中グルグルしてるのとかも…

ホテルの場面のショットが全部隠しカメラでしたっても…

 

逆にラストショットは窓に近所の風景映ってるのがよかったりしたけどでもやっぱ基本よかったのは脚本になっちゃうのかね

ランバラルが、綾野がアムロだと判明した瞬間にわかる人だけお先にあっ…(察し)ってなるとことか

Coccoの最後の台詞の「世界が優しすぎてつらい」説とか

 

総監督システム使うって手もあるか…(´・ω・`)

Clint Eastwood / ハドソン川の奇跡 (2016) ★★★★

今年86ですか…

落ち着く気配が全く無い…テンポはえーはえー

でもオリヴェイラで言えば『階段通りの人々』らへんね、

と考えればこの先があってもそんなに驚かないと思いました

同い年のゴダールは3Dで遊んでるし…

 

全体としては『ミスティックリバー』やら『父親たちの星条旗』やら『アメリカン・スナイパー』やら

近年のモチーフ総決算という印象

 

原題がパイロットの名前『SULLY』になってるくらいで

ハドソン川の奇跡」そのものよりもそのあと、

パイロットに他にやり方あったんじゃねーの疑惑がかけられる顛末が中心

 

人間的な正しさvs機械的な正しさ

みたいな争いでなんとか省だかと戦うのだけど

トム・ハンクスが通いつめる国家施設のどこにも見当たらない星条旗

救助に来た船やサリーちゃんご本人登場シーンのバックに

大きく掲げられているのが印象的でした。

みなさんアメリカはこっちですよ、みたいな

 

ところでラストの主題歌訳してないのはどうなんだろう?

英語わかんないから何言ってるかわかんないけど

見た感じ『グラントリノ』レベルのイーストウッド肝いりに思えるんだけど…(´・ω・`)

万田邦敏 / イヌミチ (2013) ★★

イヌになりきっている女を男が飼うという

普通ならダサくて目もあてられない感じの映像が

それなりに見られるのはなんでだろう?

 

と考えてみるに

やっぱこの古民家はでかいよねと思う

最後に張り替えられたのがいつかわかんない畳の部屋と

昔ながらの床張りの台所、客間的な洋室という豪華な空間

イヌ目線だから広さも十分だね(´・ω・`)