Damien Chazelle / ラ・ラ・ランド (2016) ★★
面白いか面白くないかと言われれば面白かったんだけど
……なんだろう、ミュージカル映画って大変だなあと思ったのは、ジャンルの都合上音楽があるわけじゃないですか。歌って踊るわけじゃないですか!
で、現在僕たちが見られるミュージカル映画ってのは、過去の玉石混合の中から残ったとびきりの歌やダンスがあるものばかりで、
逆に言えばだからこそ現在でも残っているものばかりで、
そういうものが比較対象になってしまうからには、新しくミュージカル映画を作ろうとすると、歌やダンスのハードルがとんでもなく高いと思うわけですよ。
そしてこの映画はそれらをまったく超えられなかったんじゃ……と思うわけですね。
例えば『雨に唄えば』とか『巴里のアメリカ人』とかなんでもいいけれど、もうこの映画って言ったらあの曲だよね!みたいなのがあるわけで、
じゃあこの映画にそんな曲があったかと言えば、ないと思うのですね。
もしくは『トップ・ハット』を見た後に思わず『チーク・トゥ・チーク』を口ずさんでしまうような、そんな曲もなかったと思うのですね。
それにフレッド・アステアとかジーン・ケリーとかなんでもいいけれど、マジこいつの動きは半端ねえ!みたいなのがその辺のミュージカル映画にはあるわけで、
じゃあこの映画にそんなダンスがあったかと言えば、ないと思うのですね。
そして、そんなのもう今の時代無理じゃね?ってのをうまく処理したのがジャック・ドゥミだったと思うわけです。
曲の大切さをしっかりとわかっていて、もう全部ミシェル・ルグランの歌にしちゃえ!ってのが『シェルブールの雨傘』だったと思うんですよ。
俳優もジンジャー・ロジャースを望めないなら、ダンスなんかできなくてもかわいければいいんだ!って振り切ったのがカトリーヌ・ドヌーヴであり彼女の撮り方だったと思うんですよ。
翻ってこの映画のエマ・ストーンは、というより彼女に対する演出はひどくないですかね。あの最初の友達出てきたとこ、スパイス・ガールズのPVでも始まったかと思ったよ…リアルな女の子を狙った撮り方はミュージカルには不向きだと思うのです。
狙うべき演出は、あの辺りが暗くなって主役が浮かび上がったりとかじゃなくて、なんでもいいからとにかくエマ・ストーンをかわいく撮ろうとすることだったんじゃないかなあと思います。